学校の道徳教育で植え付けられた、
『聖人君子』
の概念は、社会人が罪悪感をおぼえる原因になったりします。
例えば実社会では社員にリストラを伝える人事が、仕事の一環なのに個人的に罪悪感を覚えて苦しみます。
他にもノルマのために、いくらかの不正をしたりとか、社会人が聖人君子でいるのは難しい事です。
どういう考えをすれば、余計な罪悪感を覚えなくていいのか、漫画を例に解説していきます。
必要悪を認めた北条
社会人の様々な場面に通じる漫画、センゴク権兵衛の中から、北条氏のエピソードをピックアップします。
最後まで豊臣秀吉に抵抗した小田原北条氏は、元々は京で役人の家系の北条早雲が起こしました。
室町幕府の末期で、京の都は荒れていました。
北条早雲は古い勢力である将軍家を攻撃し、伊豆を奪って関東方面進出の足掛かりにしました。
そして荒れた国の中で、自分たちが新しくよりよい国を作るため、関東に独立国を作ろうとします。
旧態依然とした政権より、自分たちの方が上手くできると考えたからです。
このあたり、
既存企業 vs ベンチャー
上司 vs 部下
の構図に当てはまります。
上司と部下は本来チームなわけですが、どちらかに問題がある場合は対立が生まれます。
北条早雲は現実主義者で、荒れた世で良い国を作るには、善人ではいられないと言っています。
「仏罰はない。
ほでからして
罰は人さまが下さにゃならん」
こういう苛烈なことをする覚悟を決めて、関東に入りました。
そしてまたたく間に、関東に小田原北条の国を作りました。
非道を為す
世の中が乱れ、様々な悪も行われている時代に、才器と努力だけでは勝てない場合もあります。
そこで北条早雲は自分の息子に
「一代につき一度きり、正しさのために
非道を為すことを赦す」
と言っています。
非道に慣れたら、他の戦国大名のように短命に終わるでしょう。
ですが全く手を汚さない場合、卑怯な的に負けてしまいます。
会社員の人生もこれと同じではないでしょうか?
対会社であっても、例えばインドネシアの鉄道コンペでは、日中が競いました。
日本が地質調査やルートの計画を提出すると、インドネシアはそれを中国に横流しして、中国が安く請け負う事でコンペに勝ちました。
悪い事は続かない
日本はコンペに関して清廉潔白にやりましたが、相手も同じとは限らないので、悪に負けてしまいました。
ただこの話には続きがあり、中国は安く請け負った後に値段を吊り上げて、更に工事も遅れています。
日本は中国と競った区間とは別のエリアを受ける事になりました。
大幅に遅延している中国の区間について、インドネシアは日本に助けを求めてきています。
さすがに日本は二回も騙されないと思うので、中国の区間は遅れたままでしょう。
ちなみにインドネシアが中国を切ると、違約金が発生します。
会社の仕事でも一回限りの儲けを考えていると、じきに一回も儲けられなくなります。
『信用』
という見えないものは、思わぬところで回っています。
信用のない人間として評判が広がると、転職さえ難しくなります。
熟慮をする
漫画上の演出かも知れないですが、北条氏が非道なことをする時、ある儀式を行います。
それは家の印を押した紙を水に溶き、飲み干す儀式です。
今だったら、会社印を押した誓約書を飲むという感じでしょうか。
一代で一度きりの事なので、相当に熟慮がいります。
三代目の氏康は領土を拡大しましたが、それだけに旧勢力の抵抗を受け、包囲網を敷かれます。
そこで氏康は
敵に降伏をすると告げて、その裏で奇襲をする事にしました。
これほど卑怯な行いはないのですが、結果として勝利しました。
しかし氏康はこれを巧妙ではなく、一世一代の悪行と言っています。
わざわざ儀式めいて紙を飲むのは、恐らく自分の中に罪悪感を生まないためでしょう。
悪いことをした人が後に破綻するのは、心の中に罪悪感があるからです。
見捨てる
氏康の子、氏政に家督が移った直後、長尾景虎(上杉謙信)が侵攻してきます。
北条は民衆からの信頼が厚く、上杉から守ってくれるものと思われていました。
当時の村々は、お金を払って村への攻撃を止めてもらう事もありました。
村人たちは上杉にお金を払うのではなく、北条に期待して戦費として支払い、村を守ってくれるようお願いしました。
上杉は籠城する北条を引きずりだすため、村々を焼いて回ります。
しかし氏康は、氏政に印を押した紙を飲ませ、村を見捨てさせて籠城を続けます。
そうして時間を稼いでいる間に、同盟の武田が来て上杉は撤退します。
村が焼かれても民衆は、法を守り公平な北条への信頼を失いませんでした。
わたしの経験
わたしは会社で、上司に引導を渡したことがあります。
ネット広告の会社に入社し、上司にどういう仕事の進め方をするのか教えられました。
ただ上司の仕事のやり方はずさんで、取引先からしょっちゅう、埋もれた仕事の問い合わせがきました。
どういう風にずさんかと言うと、メールではなく紙ベースの上、その紙をデスクにうずたかく積むので、すぐにタスクが埋もれてしまいます。
このあたりをわたしが代わりに処理するのですが、非常に無駄の多い仕事に感じました。
会社に来ない
上司は遊びが理由で、大幅に遅刻をしてきます。
何だかんだ理由をつけて午後に来て、その分だけ夜は遅いです。
ひどい時には夕方まで来ません。
わたしは朝から出勤していますが、夜は上司に合わせるので、会社に長時間いる事になります。
取引先からの問い合わせは朝一が多く、不明点が多いながらわたしが受けていました。
それに来客のアポもすっぽかすので、決裁権のないわたしが出て、お茶を濁していました。
仕事が進まないだけでなく、会社の評判も悪くなります。
主導権を握る
上司の仕事がずさんだったおかげで、改善の余地が多くありました。
広告の勉強を独学でやって、さらに実地で一人で対応する内に、新たな仕事の仕方が設計できました。
仕事をデータベース中心に組み替える事にして、仕事をしながらデータベースを組んでいきました。
それができると既存の運用システムと並行して、自分のデータベースを一人で試験運用していたので、その期間はかなり忙しかったです。
そしていつでも運用を、わたしのデータベースに切り替えられるようにしました。
その準備ができてから、わたしにも決裁権をもらいました。
決裁権がわたしにあれば、上司は安心して遅刻ができるので、喜んで決裁権をくれました。
この時点で、上司の仕事は全てわたしが引き受けられるようになっていて、上司がいなくても大丈夫なようになっていました。
データベースの稼働により、わたし一人でも仕事が滞りなく進むようになり、売上を伸ばしていくことが出来ました。
そしてわたしに部下がつき、上司は別の仕事に回された後、辞めていきました。
葛藤はあった
ずさんだったとは言え、上司がわたしに仕事を教えていたのは事実です。
その人を仕事から外すという決断をした時、罪悪感が芽生えました。
自分がまるで悪行をしているような気分になり、楽しくはなかったです。
ですがしばらくして、合わない仕事を無理に続けても、リストラされたり会社が続かない現実を知る内に、上司を見限った行動を正当化できました。
皆さんも何らかの苛烈な選択が必要になる時があると思いますが、私怨によるものでない限り、許されると思います。
結果的に人生のターニングポイントになった
上司を排したのは自分の地位を上げるためではなく、取引先(主に仕入先)に迷惑をかけないためでした。
上司は何度も支払いを埋もれさせたり、アポをすっぽかしたりしていました。
わたしは謝りながら本当に申し訳ないと思っていたので、改善して誠意を示したいと思っていました。
その解決策として体制を変えました。
売買においては取引先とは等価交換の関係で、お金を払う方が偉いわけではないので、共同の経済圏を考えました。
こちらの会社の利益になり、かつ取引先の担当者も出世できる売買体系を作りました。
結果的にこれがわたし自身の出世と転職に繋がり、地位を安定させる事につながりました。
仕事を教わった上司を排すのは、普通の感覚なら悪行です。
ですが私利私欲で行動をしたわけではないので、罪悪感は植え付けられずに済みました。
罪悪感を覚えていたら、その後の選択で無意識のうちに自分に罰を与えるものを選んでいき、人生が詰んでいたと思います。
お金のために何をやってもいいのか?
戦国大名の北条さえ、悪行は一代に一度と戒めています。
それくらい悪い行いの、因果応報を恐れていたのです。
わたしの経験でも、法に触れるようなお金の儲け方をして、因果を免れた人を知りません。
例えばリゾートホテルの住み込みのバイトには、反社会的勢力の本職の人が居ました。
もう60歳を超えているのに、地元に住めないとか言っていました。
他の組の誰かをハジいて、それで未だに追われているとか言っていましたが、本職特有の盛った話かも知れません。
単にシノギがなくなって家がないだけかも知れないですが、いずれにしても過去のツケが回っています。
他にも色々な悪人たちが居ましたが、40代で因果応報としか言えないような事になっていました。
罪悪感を消す方法
戦国大名は業が深いので、仏門に入る人が結構いました。
北条早雲も仏門に入ったし、武田信玄も仏門に入ったので、信玄坊主とか呼ばれたりしています。
仕事をやりながら仏門に入るわけにはいかないので、禅とかで心を綺麗にするのが現実的だと思います。
禅はアップルの創業者の、スティーブ・ジョブズもやっていました。
社会人生活はきれいごとばかりではないので、心をメンテする作業も必要です。
わたしは、自分が儲けるに値する人間だと思えた事で、年収が上がる仕事の仕方ができました。
その辺りの詳細は、別のカテゴリーに書いているので、よければいろいろと読んで見てください。