わたしは底辺から大企業以上の年収までを経験しているので、労働とお金に関する感覚には自信があります。
それで言えるのが、お金はもらい過ぎても自分が腐るという事です。
職を転々とした後にネット広告業界で初めて入った会社では、早い段階で年収800万円くらいまで到達しました。
その頃には広告に使うデータベースも完成させていたし、惰性でやってもお金がもらえる状態でした。
働きの割にお金をもらえる『オイシイ状態』のように感じましたが、わたしはもらい過ぎに感じました。
そこで給料は大幅に減るけど、新しい経験ができるので同業種の別会社に転職をしました。
この判断は正しくて、経験の幅が広がって後に共同で株式会社を設立し、より高額の年収を得ることへとつながりました。
もっとオイシイ思いをしようと粘っていたら、腹十二分目になって身動きが取れないようになっていたと思います。
腹八分目は感覚が研ぎ澄まされ、現役でいられる時間が伸ばせます。
最後まで腹八分目で満足する
労働と収入の感覚がフリーター時代とあまり変わっていなかったので、自分の働きと収入額を比較してしまいます。
わたしの報酬は賞与の変動幅が大きかったですが、コンスタントに年収が1千万円台後半になってくると、自分の働きがそれに値するか疑問に感じ始めました。
仕事を作る仕事をすると、後は社員が回してお金が発生します。
それが積み重なってわたしの年収が上がっていったのですが、自分の働きが鈍ったと感じても、前年より多い年収だったりしました。
『このまま甘い環境だと、脳が溶けて廃人になる・・・』
という不安感にかられて、年末までいれば年収3千万円になっていた年の途中で、会社を辞めました。
引継ぎが終わってからも年末までいじきたなく待っていたら、腹十二分目になるところだったので、引継ぎが終了した段階ですぐに辞めました。
儲け過ぎない
年収だけでなく、設立時に出資した自社株もかなりの額になっていました。
早期リタイア生活の資金はあるに越した事はないですが、儲け過ぎても惰眠をむさぼる生活になりそうです。
そこで自分がまぁまぁ使ったと感じる額を、人のために使おうと思いました。
これは年収1000万円に到達した時に、震災の寄付金として赤十字に100万円を寄付して、働くモチベーションになった経験があるからです。
そこで田舎街に買った戸建てを住まない内に、300万円ほどの赤字になるくらいの額で人に売りました。
不動産売買は買主と直接対面するので、割安な物件を得て喜ぶリアクションが見られました。
お金を貯めこむ一方だと、お金が喜びを生み出す事を忘れがちなので、この経験はお金が良いものである事を再認識させてくれました。
投資も腹八分目
一番最初にやった投資はFXです。
FXは株と違って銘柄が少ないので、働きながらやるのに丁度よかったです。
始める時に自分が自然と、5万円くらい損を出して勉強する気構えになった時
『あっ、これはうまくいくな』
と予感しました。
FXで損をするのは、『お金を作らないと』という切羽詰まった状況で、判断力が最低の時です。
5万円を捨てるつもりになれたという事は、余裕があるという事です。
FXをやる人は大きく稼ごうとして始める人が多いですが、わたしは180万円ほどの儲けでよしとして、勝ち逃げをしました。
FXは何かと大金が稼げると煽る広告が多いですが、勝ちで終わるのが難しいものです。
プラスマイナスゼロで終わったとしても、勉強ができた分だけ得をしたと考えた方がいいです。
わたしはFXで投資を勉強して、株に移りました。
株もほどほど
株の売買益は8年で約800万円ほどです。
今はあまり売買はしないで、長期保有で配当金を数十万円ほど受け取るレベルです。
当初は資産の半分くらいをつぎ込んで、余裕の配当生活を考えていましたが、どうにもやる気がおきませんでした。
株に関しても給料のもらい過ぎと同じく、配当の受け取り過ぎは自分がダメになってしまいそうな気がします。
今は社会の変化を予測して、それが正解か否かを点数で確認するために株を買ったりしています。
自社株
起業時に出資もしましたが、それは開業に必要な物に消えていくのだろうなと思っていました。
株の何%を取得とかもペライチの紙で、税務署用に必要なのだろうというくらいの認識でした。
それが後にまとまった金額になり、株価算定の書類も会計士から10P以上のものが送られてきました。
これはもらい過ぎにあたらないのか?
わたしの解釈としては、起業の成否がわからない内に先に出資して、会社に泊まり込んで努力をした結果のリターンだと思っています。
腹八分目の人生
社会人にオススメの漫画、センゴク権兵衛のワンシーンにも、腹八分目の話が出てきます。
小田原城攻めからの帰り、仙石と旧友が諸国を旅する僧に会います。
「干し飯一椀にて 不老不死の秘伝を教えるが如何?
拙僧 諸国遍参し
村々の古堂に不老不死の秘密を記しておるのじゃ」
実は仙石らは子供の頃に肝試しで古堂に入っていて、答えを知っています。
「腹八分目!」
と答えた上で、僧に好きなだけ干し飯をあげようとしますが、僧は腹八分目で断ります。
そして
「不惑(40歳)過ぎたれば 腹八分目に生きてくことじゃ」
と、飯の話とも欲の話ともとれる言葉を授けます。
高転び
同じ頃、秀吉に千利休から竹を切っただけの花器が送られます。
添えられている花はサルスベリで、秀吉に天下統一の夢の八分目で高転びしないよう戒めています。
しかし秀吉は
「予が夢は八分目どころか」
「これからが始まりじゃ」
と言って、花器を庭に捨ててしまいます。
現代の社会人の腹八分目
わたしは仕事で高給を得ましたが、それなりの働きをしていました。
後に働きの割に多いと感じたので辞めてしまいましたが、いい引き際だったと思います。
そのおかげで早期リタイア生活に移行しても、すんなりと適応できました。
割のいいお金のもらい方に慣れていたら、何か大きな失敗をしたと思います。
定年退職した人が退職金を銀行の勧める金融商品に投資して溶かすとか、お金に対する感覚は知らない内におかしくなっていることがあります。
サブリースという投資詐欺
不動産関連の会社が、かぼちゃの馬車というシェアハウスを会社員等に販売していました。
購入する人はローンを組んでシェアハウスを買うのですが、割高に感じる物件です。
それでもよく売れたのは、かぼちゃの馬車の販売会社が部屋を一括で借り上げてくれて、30年間の家賃を保証するという内容だったからです。
購入者が払った額に対するリターンは、毎年8%です。
これは少ないように思えるかも知れませんが、1億円の物件だとしたら毎年800万円です。
銀行からのローンを返し終わったら、そこからは800万円の不労所得になります。
値動きのリスクがある株でも、5%の配当で高配当と言われているので、8%の固定リターンはありえないほど高いです。
労働の対価は遠慮なく受け取る
腹八分目という事は、八分までは遠慮なくお金をもらうべきだと思います。
やたらお金を否定するNPOとかがありますが、お金があった方が人助けできますよね。
お金への拒否感があると、本当にお金を避けるようになってしまいます。
腹八分目だったら騙されない
30年間賃料保証で8%のリターンなら、世の中のお金が全て集まるレベルの投資です。
当然、こんなものは存在しません。
FXや株をやっていれば、数%のプラスを出すのにどれくらい知恵を絞る必要があるかわかっているので、苦労なく8%のリターンなどありえないと知っています。
例え投資を知らなかったとしても、腹八分目で生きることを習慣にしていたら、騙されなかったでしょう。
仕事でも投資でも、頭や体で汗をかかなければ相応のお金は得られませんでした。
お金は養分
農作物に養分を与えすぎると、腐ったり育たなかったりするそうです。
お金もこれに似ていて、成金の家の子供が与えられ過ぎたゆえに、ふにゃふにゃの大人になる例は古今見られます。
逆に水分や養分が少ないと、甘みが増すサツマイモのような作物もあります。
今のわたしは貯金の残額を一切意識しないようにしていて、枯れずに済んでいます。
皆さんも大金を得たり、貯金がまとまった額になる事があると思いますが、そういう時こそ
『腹八分目』
を思い出してください。