新卒でヌルっとフリーター生活に入って、宅配便の物流センターで荷物を仕分けするバイトをしました。
アルバイト雑誌の『高収入』のカテゴリに載っていた、日給12,000円の物流会社を選びました。
ダメな時って『楽々』っていう言葉にひかれますよね。
それに1日が12,000円に変えられる! という短絡的な発想。
若いと自分の体力が無限にあると勘違いしがちで、すぐに12,000×20日=24万円とか皮算用します。
おろかにも自分で自分を、ピラミッドの建設労働並みの重労働に放り込んでしまいました。
そしてあまりのキツさに一日で逃亡しました。
仕分けのバイトを辞めたのは、体力の限界で動けなくなったため
仕分けのバイトを辞めたと言うか、正確には1日で飛びました。
経験がないほど身体がバキバキの状態で、連日の作業は到底できませんでした。
『仕分け』という文字だと軽作業のイメージですが、元々は何か怖い漢字を使っていたのだと思います。
あまりに過酷な仕事で1日が終わると、倒れている人の中で絶命している人をより分ける『死分け』が語源だったんじゃないでしょうか?
それでは縁起が悪いので、『仕分け』という当て字にしたんじゃないでしょうか?
それほど過酷な作業です。
バイト終わりの臭いマイクロバスの中で、明日は飛ぼうと決心しました。
農家のバイトもキツかったですが、仕分けの方がキツく感じました。
仕分けはずっとピーキーな仕事の仕方が続きますが、農家は緩急がありました。
物流センター内での仕分けはどんな感じ?
わたしが入った物流センターは、かなり広大な広さでした。
構内作業という事でしたが、雨は凌げても外気と同じで、冬場だったので寒かったです。
勤務時間は10時間拘束で休憩が1時間くらいで
・配達先ごとに荷物を集める
という作業をします。
右から左に受け流すだけの簡単なお仕事っぽくみえますが、実際はピラミッドの建築作業と同じくらい過酷な仕事です。
トラックから荷物を降ろす
一番最初の作業です。
運転手がボンボンと床に降ろした荷物を、ベルトコンベアやローラーに乗せていく作業です。
わたしが担当したのが、トラックから押されてくるローラーの上の荷物を、構内のローラーに乗せ換える場所です。
普通に流れる方向を変化させればいいだけのはずが、段差があって持ち上げなければなりませんでした。
他のレーンを見ても、横方向への力だけで済んでいます。
かなり低い中腰の体勢で荷物を持ち上げるため、腰に負荷がかかります。
段差はこのレーンだけなのでトラック運転手に知られておらず、トラック運転手は他のレーンと同じ速度で荷物を流します。
このレーンだけ、ダンベル上げを超高速でやるようなものです。
(これ無理・・・)
が何度も頭の中でこだましていたら、荷物の数が減ってきたので、わたしの立ち位置がトラック付近に移動しました。
わたしがやっていたキツい箇所には、別のバイトがスライドして入りました。
少ししたら、そのバイトが追いつかなくなって
「もう流さないで!」
と悲鳴に近い声をあげました。
ああ、やっぱりそこはキツかったんだ・・・
配達先ごとに荷物を仕分ける
ベルトコンベアに乗った荷物を構内の別の箇所に積み上げます。
そこから、配送先ごとに床に積みなおします。
この作業がサッパリわかりませんでした。
配達先ごとの置き場が書いてある紙が柱の高い所に貼ってあり、眺めているとバイトの古株(といっても数日くらい?)に
「あそこに貼ってあるのは違うから」
と言われ、床に書いてある文字を見るように指示されます。
文字が消えかかっていたり、町名がすべて網羅されていなかったりします。
だから荷物の置き場に迷って古い紙に規則性が無いか見ていると、古株の人が来て
「あの壁は違うから!」
と言って、荷物をその人だけが知っている所定の場所に置いてすぐに立ち去ります。
毎回、『違うから!』と言うだけで、最後まで何が正解かは教えてくれません。
秘伝のタレか何かでしょうか?
恐らく位置を暗記する方式なのだと思いますが、手本がない最初の段階ではやりようがありません。
作業の正解を示さずミスリードを誘う理由が謎ですが、そういう文化なのだと思いました。
仕分け作業のキツさ
真冬で構内は寒かったですが、作業をするとすぐに半袖のTシャツに汗が浮かびました。
筋トレのダンベルなら自分のタイミングで止める事ができますが、バイトは時間がくるまで止められません。
この自由の無さが辛いところです。
絶対に重たいものを持ってはいけない体勢で、何トンもの荷物を持ち上げます。
コンベアの継ぎ目が壊れていて段差がある箇所で、中腰で荷物を持ち上げ続けました。
10tの長いトラックを空にしても、次のトラックがすぐに入ってくるので、汗だくで作業をし続けました。
最初の休憩で顔に粉のようなものが掛かっていたので、ホコリか何かと思ったら塩でした。
冬で乾燥していたので、すぐに塩になったようです・・・
休憩時間にダンボールで寝る
休憩は小1時間くらいだったでしょうか。
仕分け作業をする建物の隣の建物で、休憩をとりました。
ここも暖房がなくて寒かったのですが、持参した冷え冷え弁当を食べて寝る事にしました。
とはいえ学校の床みたいに冷たいので、ダンボールを敷かなければ寝られません。
ダンボールで寝るって中々のジプシー感だと思うのですが、この時は何も考える余裕がありませんでした。
この休憩時間中に飛ぶ人もいました。
電車も動いていない時間だし、駅まで結構な距離があります。
残るも地獄、逃げるも地獄といった感じです。
仕分けのバイトは、人生のキツい仕事の三本に入ります。
明るくなってきて、仕分けから解放される
外が明るくなってきて、朝勤務の人がやってきて、ようやく仕分けから解放されました。
手はボロボロでTシャツはダルダルになっていましたが、気にする気力さえありませんでした。
他の夜勤の人とマイクロバスで駅まで送られ、そこで解散でした。
電車の中では『ガクッ』と気を失うように眠ってしまいました。
意識を失いつつ
(もう絶対やめよう・・・)
と決意しました。
仕事をすぐに辞めてしまい劣等感を抱く人もいると思いますが、壊れる前に辞めたと思えばよくないですか?
辞めた後の人生も、そんなに悪いものではなかったです。
1日で辞めたその後 ⇒ 経歴
バイトを辞めた後に物流を勉強
順序が逆ですが、この仕分けのバイトを飛んだ後に、物流に興味を持って勉強しました。
当時、システム化を進めていたクロネコヤマトに関する本を読み、フローの重要性を学びました。
フローというのは応用範囲が広く、様々な仕事の効率を上げられます。
既存のやり方を変えるというのを、人間は嫌います。
例えば地区コードごとに荷物を分ける際に、間違った紙が貼りっぱなしでした。
これが象徴するように、数秒で済む改善もなかなか行われません。
神経が細かく気が付きやすい人は、こういう改善作業に適性があります。
フローを変えると効果は永続的に上がるので、これが出来る人の給料は上がりやすいです。
システムの悪さが目立つ物流会社
わたしがバイトをした物流会社は、作業フローやシステムの悪さが目につきました。
バイトレベルで感じるくらいなので、文化として根深く残っていると思います。
利用者の立場でも、この物流会社で何度かトラブルを経験しました。
最近はネットで配送状況を確認できますが、この物流会社のステータスはまったくアテになりません。
通常は、
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発送元エリアの物流センター
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配達先の物流センター
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配達営業所
と順を追ってステータスが変化しますが、この物流会社は荷物預かりのステータスで数日変化がなく、突然配達に来たりします。
これだと、客が荷物を受け取る確率が下がると思うので、配達員にとっても非効率です。
他にも、荷物をずっと待っていたのに来ないのでステータスを見ると、不在だったとなっていました。
マンションにはフロントもあるので、不思議に思って電話をすると
「回れなくて…」
とのこと。
箱が潰れていて、玄関先で開封確認をさせられた事もあります。
これらは全て、システムが悪い事に起因します。
仕分けのバイトを経験できてよかった
恐らく最もキツい部類の肉体労働です。
自分の肉体的な限界を知れたというのは、良い経験になりました。
キツい仕事の尺度を若い内に持つことができたので、どれくらいが適正な仕事量なのか後の仕事で役にたちました。
身をもって非効率な作業を経験した事で、効率化を覚える原動力となり、それを仕事にする事ができました。
わたしはこのバイトの物流会社の作業で、仕事に効率性や規則性を見出したいタイプの人間だと気が付きました。
仕分けのバイトはもうできない
中腰の状態で重たいものを扱うという、多分カイロプラクティス的に一番やってはいけない姿勢でしょう。
腰のヘルニアって軟骨が削れて起こりますが、仕分けのバイトで結構削れていたような気がします。
体を使う仕事は、やはり長年やるのは難しいように感じます。
わたしは人より、上手に出来る仕事は少ないです。
ですが得意な一点だけで仕事を探して、適職に就くことができました。
職を転々としても、最終的にハマる仕事に辿り着けば、人生は楽になっていきます。