コロナの10万円給付金で、マイナンバーを使ったオンライン申請が用意されました。
しかし照合に郵送以上の手間がかかり、市区町村の役場ではオンラインを取りやめる所も出ました。
わたしはいろいろなWEBサービスを利用してきましたが、マイナンバーカードで確定申告をした時は、難しいと感じました。
例えば
『署名用(電子証明書)』
というのが、すぐにパスワードと直結しないので、脳内で翻訳が必要でした。
戦時中の日本で、英語禁止でスポーツをしていた頃のようです。
ラグビー→闘球
言葉の連想ゲームが必要です。
日米のITの違いは、他にもあります。
用語だけでは説明がつかない、米国との合理性の差とは?
日米の設計思想の違い
マイナンバーカードを使ってみて、システムに対する日米の違いを感じました。
・米国は、下位を切り捨てる
日本の官製のシステムは、ITのレベルが低い人を想定しています。
レベルが低い人というのは、官側の年配の人も含みます。
紙と印鑑とFAXを信奉し、最初からカスタマーサポートに問い合わせをするのが前提の人々です。
マイナンバーカードのシステムを発注するのは官側の責任者クラスだと思いますが、システムをよく理解していない人は、FAXと同じようにパソコンを使おうとします。
役所のチェック方法は、目視でデータを見て確認するという、紙と同じ使い方です。
だからITに慣れた人が戸惑うようなシステムになります。
結果、全ての人がわかりにくいシステムになってしまいます。
日本のシステムは、人と人が直接会う仕事の延長のように出来ています。
米国は出来ない人は切り捨てる
米国のWEBサービスは、そもそも電話をかけようと思っても、つながらないように出来ています。
広告利用料が月に3千万円を超えてから、初めて電話番号を教えてもらえたりします。
ユーザーは基本、問い合わせ画面から発信すると
『特に問題が無かったらメール返信しないよ』
的な確認メッセージが出ます。
あるWEBサービスで、何かの手違いでクレジットカードの1枚が利用禁止にされたので、問い合わせ画面で事情を説明しました。
その度に
『問題は解決したよ。サンキュ』
的な回答でしたが、問題は解決していないままです。
海外のサポートセンターが、翻訳機を使っているような気がしたので、英語にして再度送りました。
またも
『問題は解決したよ。サンキュ』
と返ってきましたが、問題は変わりません。
相手のWEBサービスのデータベースのどこかに、利用禁止のカード番号として残ったままなのでしょう。
問題が解決しないので、大人しく別のカードを使いました。
別に使ってくれなくてもいい
もう一つ別件で、法人アカウントが利用停止されたので問い合わせをした時の事。
事情を細かく説明をしても、返信の最後に
『これは最終回答です』
として打ち切られてしまいました。
このように細々としたユーザーに対応はしないで、上位の人だけを相手にしています。
官のマイナンバーカードと民のWEBサービスの違いはありますが、米国の合理性追求の文化が垣間見れました。
システムの作り方の違い
マイナンバーカードのシステムで感じたのは、作る側の保守的な姿勢です。
減点主義の組織形態では仕方のない事ですが、ここにも日米の違いがあります。
・米国は叱られてもいいから成果をとる
日本は叱られないように作る
暗証番号の設定用紙
利用者証明用(電子証明書)
住民基本台帳用
券面事項入力補助用
※利用者証明用・住民基本台帳用・券面事項入力補助情報に同一の番号を設定する場合は、カード内共通にご記入ください
この中で、※印に但し書きとして書かれている
『利用者証明用・住民基本台帳用・券面事項入力補助情報は共通でもいい』
という後付けが、保身的な思考です。
ユーザーにとって初めてのシステムですが、その設定をユーザーに委ねています。
用語的にも何に使えばいいのかわからない物なので、共通にしていいのか悪いのか判断できません。
マイナンバーカードによる給付金
コロナで国民一人あたり10万円が支給される事になりましたが、かなり時間がかかりました。
その要因の一つが、マイナンバーと銀行口座が紐づいていない事でした。
なんでも、プライバシーの問題を訴えた人がいたのだそうです。
米国ならそういう意見をバッサリと切り捨てるのですが、日本は拾ってしまいました。
銀行口座を国に知られて困る状況って、普通の人には無いのですが。
会社の給料振り込みでも、社員が口座番号を間違ってあげる事がままあります。
今回の給付で役所は、相当に大変だった事は想像できます。
ユーザーと役所側、全体の手間を考える能力が、システムの設計者には必要です。
米国は叱られるの上等
アメリカの道路は日本と逆の左側通行です。
なのでアメリカの右折は、日本の左折と同じ感覚で、対向車線を跨がないで行えます。
アメリカでは殆どの場所で、赤信号でも右折がOKになっています。
交通当局が絶対に叱られないように考えるなら、赤信号の右折はNGにするはずです。
ですが右折で発生する事故率が少ないので、切り捨ててしまっています。
これは無責任なのではなく、実利を重視しているからです。
日本はキッチリしてほしい人が多い
アメリカでは荷物の時間指定が機能していません。
通販で買い物をしても、届かないとか部品が足りないとか、そんな事が起こります。
空港のロストバゲージ(スーツケースが別の国に行ってしまう)なんかも、日本が一番少ないです。
このように日本は
『仕事をキッチリしようよ』
というのが強いので、そのプレッシャーにマイナンバーの概要を設計した人が反応した節があります。
わたしも荷物の時間指定をジッと待っているタイプなので、日本型でないとムリです。
それと、作るに際して年功序列の組織も問題です。
ITなどの技術系のものは、長年やっている人が有利とは限りません。
ミュージシャンが段々と歌が作れなくなって、プロデューサーになるように、前面からひく必要があります。
長年やってきた人は、
『どういう若手に任せれば大丈夫か?』
という、人選びをするのが向いています。
仕様にまで口を出してしまうと、使いにくいものが出来てしまいます。
日本のシステムの参考
日本人がシステム作りに向いていないわけではないと思います。
ユーザーの視点に立つ気配りが得意なはずだし、深掘りしていく作業にも向いています。
能力を制限するような、減点主義の評価システムがない場所なら、良いものができます。
セブンイレブンのシステム
イトーヨーカ堂からセブンイレブンが作られた当初、システムは存在していませんでした。
ノウハウが載っているとされたアメリカからのマニュアルが、掃除のやり方などだったため、社員が独自に作る事になりました。
最初はシステムがないので、紙と電卓で商品の動向を分析していました。
そのデータを売り場にフィードバックして、そのうちにレジと連動するシステムを作り、改善を続けました。
結果、世界一優秀なコンビニのシステムを作る事ができました。
Amazonが出来るずっと前に、小売のシステムを完成させていました。
マイナンバーカードを使った住民票の印刷も、セブンイレブンの端末を使ったら簡単にできました。
トヨタの自動車工場
現在の自動車工場の基礎は、アメリカのフォードが作りました。
しかし完成の域まで高めたのは、トヨタだと思います。
工場のフローも無駄がないですが、部品を必要な分だけ仕入れるという管理も優れています。
無駄な在庫は費用がかかるので、悪としています。
こういう細かい部分に気が付き、一つ一つ潰した結果、素晴らしい工場システムができました。
このように日本人は、システム作りに向いていないわけではありません。
会社の仕事のフローを作る時は、万人の声を聞いたらボンヤリとしたものしか作れません。
聞くに値する意見を言える人は、ごくわずかです。
システム作りには無駄な意見を切り捨てて、責任を背負う勇気が必要です。