好きなように仕事をするために、共同で会社を起業しました。
年収は、辞めた年は末まで在職していれば3,000万円になっていました。
それでも退職をしたのは、恵まれた環境で自分が老害化しそうになったためです。
恵まれた環境でも会社を辞めた理由
わたしは氷河期から新卒フリーターをやって、正社員でもブラック企業などを経験しました。
そこから這い上がる為に能力が向上した成功体験のためか、恵まれた環境には慣れませんでした。
このあたり、不安定な家庭環境で育つと、安心できる環境が逆に不安になる心理に似ています。
恵まれた環境の中にいると、だんだんと自分の能力が衰えてくるように思えて、それが怖くなりました。
過去の成功にすがる
人は過去に成功すると、以降もそれをなぞろうとします。
機械が発達する以前はそれが正しかったですが、今の時代は技術の進歩に適応する能力の方が重要です。
わたしは最小の手間で必要十分なシステムという、実用的な道具を作ってきました。
そこに固執して、新技術に否定的な意見を持っている事に気が付きました。
わたしが嫌ってきた老害的な考え方に、自身が染まりつつあったのを悟り、身を引くことにしました。
カッコ良く言っていますが、衰えてそれまで通りの働きができなくなるのを、他人に指摘されるようになる前に逃げたというのもあります。
迷ったら苦しそうな方を選ぶ
資産は築けましたが、日本が負債をリセットするためにインフレを起こす可能性があります。
だから、蓄えはないものと思っています。
その精神状態で、
・40代で退職
・ごまかしごまかし在職
を選ぶとしたら、楽なのは在職の方でした。
周りの若い人を否定して、自分の地位を安泰に守るとか、マウンティングで生き延びる事ができます。
しかし、今までの半生では、常に苦しそうな道を選んで成功してきました。
すきな歴史エピソードは、関ヶ原で敵に囲まれた島津軍が、一番猛勢な敵方に向かって活路を見出した話です。
勉強が必要そうな道とかって、やってみると実は楽なルートだったりしました。
役職が上がっても悩みは生じる
退職の一番の理由は、自分の老害化が問題でしたが、他にも副次的な要因はありました。
IT系の業種に入ってからは、年俸制の会社が多かったので、残業や休日の概念は希薄でした。
それが起業をしてからは完全に意識しなくなり、仕事一辺倒になりました。
設立初期で少人数の頃、年中無休で動く自動プログラムを作りました。
しかし、様々な要因でそれがコケる事があるので、休日でも必ず一度は会社でチェックしました。
適職なのでゲームをやる感覚でしたが、ちょっと偏り過ぎた感があります。
人が増える
人が増えてからは、問題が持ち込まれる事が増えました。
大体、どこかで埋もれた問題が、タイムリミットによって表に出てきます。
担当者では解決不能になったものが持ち込まれるので、面倒なものばかりでした。
そういう問題は社内ルールの徹底で減らすことができますが、それだと最低限の者に会社全体が合わせる事になります。
大企業の勢いがなくなるのは、そういうルールのためだと思っています。
なのでルールにバッファを持たせて自由度を確保したかわりに、個別対応が発生しました。
夜は遅い
会社の設立時にシステムで合理化して、社内にボトルネックは作らないようにしました。
経理の社員を配置しない代わりにデータベースを作り、金銭に関する事もわたしが担当しました。
ネットバンクと社内のシステムを連携させたり、ここでも合理化しましたが、他の対人的な部分でロスが発生します。
段取りが不器用な社員は、こちらとタスクの渡し合いで進めるような事を後回しにして、一日の最後に依頼をしてきたりします。
毎日、誰かしらそういう社員がいました。
それでもわたしからのターンを当日中に返して、翌朝に社員が朝一で動けるようにしていました。
そのため、夜遅くまで残っていました。
働く加減がわからない
合理化で他人の仕事が減らせるように考えていましたが、自分に関しては働く加減がわかりませんでした。
働き方は誰にも強制されませんでしたが、もう一人の自分に動かされているような感じでした。
マルチタスクではないのでワークライフバランスより、ギュッと仕事して早期リタイアする方が合っています。
電話が怖くなる
基本、社内のやりとりはメールとかチャットが基本ですが、読書をしない社員とかは文字コミュニケーションが苦手でした。
そういう社員はメールの使い方も怪しくて、しょっちゅう埋もれさせていました。
埋もれた時限爆弾をどうすればいいか、という電話がわたしに掛かって来て、面倒な仕事が発生します。
だからスマホが鳴ると、緊張感が走るようになりました。
パワハラみたいなものって役職の高低だけでなく、人格的な違いでも発生する気がします。
ITはわたしの適職でしたが、対人的な部分はやっぱり負荷を感じます。
退職は正しい判断
わたしは40代で退職しましたが、その後に大企業でも45歳リストラが目につくようになってきたので、自分の肌感が時代より少し早めだったので安心しました。
会社に残って、代表でもないのに若手に
「この会社はワシが作った」
とか偉そうにする醜態を晒さず、会社が絶好調の内に潮時で退職できました。
人生のイベントは一つクリアした
会社を起業するというのは、人生のイベントとしては、良い思い出になりました。
それに、役員という経営側の立場を経験した事で、会社は有機的な生き物だと感じました。
他にも、家を買うイベントをやっつけでこなす事ができたのも、起業による収入のおかげです。
結婚イベントに関しては、やっていないですが後悔はありません。
恐らく、一番欲しい『平穏無事な時間』というのは得られなかったでしょう。
役員のメリットはあまり・・・
わたしはフリーターで社会に出たので、マインドもそれが一番強いです。
その上で役員まで経験したので、色々な立ち位置を理解できるようになりました。
労使問題の書き込みで
『無能な役員の報酬が高い』
とか見ると、ドキッとしてしまいます。
役員は雇用保険に入れないし、労働時間もリミットが規定されていない(確か)ので、あまりメリットを感じません。
1日フルで休んだ記憶は、あまりないです。
銀座で寿司を食べているのって、どういう業界の役員なんですかね。
役員だから経営側の人たちを見てきましたが、
『搾取してやろう』
とか思っているわけではないし、絶対強者でもなかったです。
悩みも不安もあって、それを絶対に自分で解決しないといけない立場という感じです。
フリーターだからと言って仕事に無責任ではないのと同じで、会社や経営者も敵ではありません。
安定は求めるべき
普通の人には、リスクを負って起業して成功したら、安定的な地位を保つ事をオススメします。
わたしは元の性質と、就職氷河期初期の経験からか、不安定を求めてしまいます。
起業もそういう生き方から、必然的に起こったイベントです。
失うものがなかったからこそ、人生ゲームみたいに行動ができていたと思います。
マス目にとまって
『会社を起業して$2000』
くらいの感覚です。
挙句、今の肩書は中年無職です。
ですが、充実した生活を送っています。
わたしの経験は、倍率の高い会社に入社できるような人には、参考にならないかも知れません。
そうではない人には、正規ルート以外にも、人生をマシにする方法がある事を知っていただければと思います。