システム設計の考え方の続きです。
本ページではデータベースがそんなに難しくないということを書いています。
前回の
では、設計に着手する前段階が重要という事を書いています。
例えばあなたが毎日の食事を記録した日記をつけているとします。
そこからキャベツを使った料理の情報を抜き出す、みたいな事ができるのがデータベースです。
データベースは難しいものではなく、単に便利な使い方が出来るメモ帳みたいなものです。
では、便利な道具の使い方を考えていきましょう。
システム化はコミュニケーションが変わる
人同士のコミュニケーションは双方向です。
不明確な事を対話ですり合わせて、明確な形にしていきます。
例えるならキャッチボールのようなコミュニケーションです。
それに対してシステム化は、工場のベルトコンベアのように一方向的なコミュニケーションです。
次の部署に情報を回したら、問い合わせが戻ってこないようにします。
とはいえ実際には普段から会話や電話が好きな人は、一方向的なコミュニケーションが苦手です。
何かしらミスや不明瞭な事をして、対話が必要になります。
それがあったとしてもシステム化は恩恵が大きいです。
人為的なミスが起こったらどうするか?
入力時の規則を厳格化してミスをゼロにする事もできますが、そうすると入力に手間がかかります。
一番ミスしやすい人に合わせてシステムを作ると、かなり使い勝手が悪くなります。
外注にお願いすると、大抵は入力時の制約を増やしてミスがゼロになるよう設計されます。
ミスの余地があるとどうしても責任問題が発生するので、外注先は安全策を取らざるえません。
ですが社内で設計する場合、一定の確率でミスが起こる事を織り込み使い勝手を優先させる事ができます。
わたしの経験ではミスを最小に抑えはしても、ゼロを目指さない方が生産性が高かったです。
一定の確率で起こるミスに対応する、柔軟性のあるものにしました。
この辺りのさじ加減が、システム設計で稼ぐ時の要点になります。
自分の仕事だけ考えない
システム設計を無難にやるのがゴールではありません。
システム化で会社全体の生産性を上げる事が目的です。
周囲の人の負担を軽減させてあげて、少しでも彼らの時間を生み出すのがシステム設計者の役割です。
稼働させた時に使いやすいと感謝されると、やはり嬉しいものです。
その信頼性は社内のメンバーの誰かが独立や転職をした時に、縁となってつながり続けます。
わたしはこの縁のおかげで経験を積むための転職に苦労しなかったし、最終的に高い報酬を得ることができました。
個(デスクトップ)と公(データベース)を分ける
システム化する時の要点は、
個(デスクトップ)と公(データベース)を分ける
事です。
例えば各営業マンが自分のパソコン上のエクセルに記録しているのが個(デスクトップ上)の記録だとします。
そしてそれを管理に送ることで、会社の公の記録になります。
この社内管理が破綻しているのは、各営業マンの個のエクセルをそのまま管理に送らせているような会社です。
個(デスクトップ)のエクセルは担当営業の個性が反映されていて、各自バラバラの形式です。
管理は何が何だかわからず、業務は破綻します。
かといって公を押し付けると営業が破綻
営業に一案件ずつ直接データベースに入力をしてもらうシステムだと、営業は結構うんざりします。
業種によって売買の案件数は違いますが、月に500案件も入力させられるとしたら、営業にとっては悪夢です。
どのみちそのシステムに入力する前に、営業はエクセルをつけているはずです。
つまり営業からすると個のエクセルへの入力とデータベースの入力で、二度手間になっています。
それに広告案件の場合は売った後でも効果次第で、値段が変わったりします。
それがデータベースに入力した後だったら、該当データを呼び出して修正作業が必要です。
そうでなくても営業はなるべく個(デスクトップ)の記録を管理に出さずに、手元に置いておきたがります。
こういう心理もくんでシステム設計をします。
営業がやりやすいようにする
会社に売上をもたらしてくれるのは営業です。
システム設計はその売上に対して、なるべく経費をかけないようにして利益を上げるために行います。
だから営業の仕事がしやすいように設計するのが至上命題です。
営業がつけているエクセルを流用して、公のデータベースに取り込むのが最も手間が少ない方法です。
営業が個のエクセルからデータ取り込み用のエクセルにコピペして、それを管理に提出します。
データ取り込み用のエクセルには内容チェック用のVBAが組み込まれていて、営業が実行すると間違いを教えてくれます。
その間違いがなくなった状態で管理に送ります。
この形が営業の手間が少なく、かつ管理も定型のデータを受け取れます。
営業が個々でつけるエクセルから設計
システム設計をする時、システム化したい部分だけを見ると失敗します。
そこに至るまでの経緯をさかのぼり、原点まで辿りつく必要があります。
本ページの例でいうと、営業マンの売買が確定した時が情報のスタート地点になります。
だからその時に営業が入力するエクセルから見直します。
エクセルはセルの結合をしていると、一気にデータとして使いにくくなります。
そういったところから見直し、セルの結合なしでも案件がわかりやすいエクセルを提供します。
わたしは営業が個(デスクトップ)で使うエクセルにクライアントごとの利益が計算できたり、いくつかのVBAを組み込むなどして使うメリットがあるようにしました。
このように営業に何かをさせる場合には、代わりに何かを軽減してあげます。
作業方法の変更は単なる押し付けでは芸がなく、システム設計者が疎まれるだけです。
負荷を軽減して営業に信頼されると、あなたの社会人生活が安定します。
システム設計の実際は、割と人間くさいところがあります。
データベースの設計の要点
データベースは一度の入力で、あらゆる形でデータの活用ができる便利な道具です。
難しいのではなく、便利な道具だと思ってください。
例えば販売先に請求書を出す時にも使えるし、逆に仕入先から請求書が届いたら照合できます。
各営業の売り上げデータや、事業部ごとの収益。
さらに会社のキャッシュフローや経営数字など、データを様々な用途に使えます。
自分で作る場合は何の用途で使うのかを明確にして、徹底的に無駄を省きます。
ただし最初からキツキツに無駄をなくして作ると、後の業態変化に対応できません。
わたしの職歴はベンチャーばかりだったので、次々と新たな事業が出てきました。
マスタ化する
データベースの特徴は、あらゆる形でデータを取り出す事の他に、リレーションという紐づけがあります。
営業マンが日々の売買記録の販売先名に『トヨタ』と書いていても、データベースで
『トヨタ自動車株式会社』
という正式な社名をつけてくれます。
このリレーションもシステム設計の要点になります。
なぜマスタ化が必要か
各営業の記録を公の記録にするには、統一した方がいい項目があります。
取引先名もその一つです。
ある営業マンがトヨタと記録しているのに、別の営業マンがTOYOTAで記録していたら、システムは別々の会社だと認識します。
だから会社共通で使うものはマスタに登録をします。
どこまでマスタ化するか?
これは自分の会社の業態によって違います。
自動車部品の販売仲介業者の例では販売先・仕入先はマスタ化するとして、商品名はどうでしょう?
もしも商品名ごとに利益等を出すのなら必要ですが、そうでない場合は不要です。
何でもマスタ化しておけば無難ですが、それだと手間がかかりすぎて生産性が落ちます。
コンビニはバーコードを使ったPOSシステムで商品ごとに管理していますが、POSシステムのない業種の場合は判断が分かれます。
わたしの経験では流動的な商品が多かったので、商品はマスタ化しませんでした。
その代わりに事業部や担当者はマスタ化して、各々の数字を出したりしました。
システムの完成度は8割程度で構わない
機動戦士ガンダムに出てくるジオングは偉い人に未完成と言われていましたが、現場では十分に完成品の扱いでした。
システムの完成度も8割程度が最適です。
最初から10割を目指すと完成までにすごく時間がかかります。
それに未完成の部分というのは『システムのゆとり』みたいなもので、あると将来の変化に対応しやすいです。
実地で正しかったのは8割の完成度でいいので素早くシステムを完成させ、稼働させた後で変化を加えていく形でした。
事前にどんなに設計を練っても、稼働させると必ず都合の悪い部分が発生するものです。
既存業務の延長でシステム化しない
システム化に際して既存業務の延長で考えると、せいぜい2~3倍の効率化に留まります。
システム化は100倍の効率化を目指すものなので、発想の比較が必要です。
例えばレオパレス21が希望退職者を募ったところ、多くの経理が辞めてしまって決算発表が遅れるという事がありました。
いったい何人で経理をやっていたのかわかりませんが、かなり属人的な仕事の仕方が伺えます。
人手でなければ出来ない細かい部分があるのかも知れないですが、わたしなら出来ない業務は切り捨てる事も考えます。
切り捨てる基準は、3の業務を切り捨てたら20の業務効率が上がるなどの場合です。
システム設計の勉強
システム設計をするのにデータベース等の基本的な知識が必要です。
ですが参考書さえ難しくて理解できず、とん挫する人もいるでしょう。
わたしがそうでした。
データを取り出すだけでSELECTやらJOINなどの英文が必要で、さっぱりわかりませんでした。
なので自分で勉強法を考えて基礎知識を入れて、実地で試して経験を積みました。
そのあたりの勉強法を、つづきのページに書いていきます。