企業説明会でのマナーと、企業の採用基準に関するニュースです。
「説明会で社長が講演しているときに、お茶を飲んでいる学生がいた。社長は降段後、『あの学生の名前をチェックして、必ず落とすように』と静かに怒っていた」(機械メーカー)
このニュースから、企業が学生を落とす視点を考えていきましょう。
なぜ企業説明会で机にペットボトルを置く学生を落とすのか
ニュースの紹介では、マナー違反として紹介されていたので、反発する人が多かったです。
『無意味なマナーより、のどが乾いたら飲んだ方が合理的だろっ!』
マナーという精神論っぽい視点でニュースを見ると、感情的になってしまって本質がわかりにくくなります。
客観的にニュースを分解してみましょう。
説明会で社長が話している時にお茶を飲む
自分が話をしている時に、あまり知らない人がお茶を飲んだら『んっ?!』と思う日本人は多い気がします。
彼女の家に行って、彼女の父親を下の名前で呼ぶ強心臓の国、アメリカなら気にしない人が多いと思います。
良く知らない人が、我を出した時に『んっ?!』と思う感覚の違いは、国や年代によって異なります。
人間は歳をとると感覚も変化します。
私自身も若い頃、求人広告に履歴書不要となっていたので、未経験業種なのに手ぶらで面接を受けに行った事があります。
今の感覚で考えると、準備不足に思えます。
面接に行ったら面接官に「履歴書はありますか?」と聞かれたので、他の人は持って行っていたのでしょう。
その会社は外資でもトガッた会社でもないので、持って行った方が無難だったでしょう。
採用面接は落ちました。
広告に騙されたというより、経験も書類もなくおしゃべりだけで入れると過信していた自分が怖いです。
自分自身の事でさえ違和感を覚えるので、社長が学生の行動に違和感を覚えるのはわかります。
お酒じゃなくてお茶なんだから、飲んだっていいだろうという感覚の学生は、社長にとっては「ムムッ!(怒)」の対象だったわけです。
人は、自分と同じ人を評価する傾向があります。
機械メーカー社長
のどが乾いたから、遠慮なくお茶を飲む。
こういう人は我が強いため、ストレス耐性がある人です。
遠慮がなく押しが強い人が欲しいという会社もあるでしょう。
しかし、この記事では機械メーカーの社長が怒ったとなっています。
二代目ボンボン社長でなければ、社長になるにはそれなりの能力が必要です。
さらに歳をとっていれば、過去にどういう人間が会社で伸びなかったのかも経験しています。
機械はどの部分を変化させれば、その先でどうなるという予測も多いです。
この社長は、学生が説明の始まる前段階で喉を潤しておかない段取りの悪さにも、嫌悪感を抱いたのではないでしょうか。
小田原の北条氏政の逸話で、こんなものがあります。
食事の時に氏政が、汁を飯に注いだ汁かけ飯を食べた。途中で汁が少なかったのでつぎ足した。
それを見ていた父・氏康が、『飯にかける汁の量もわからんとは』と嘆いて北条家の終わりを予感した。
これも、二度汁をかけるのがマナー違反というより、毎日やっている事を把握していない愚鈍さを叱責しています。
講演の長さと自分の喉の渇き具合から、事前にお茶くらい飲めるでしょという気持ちです。
この社長は、客先で客が話をしている時にお茶を飲むような事はしていないのでしょう。
そういう、自分と同じ感覚を学生にも望んだわけです。
正しいのは生き残った方
社長と学生の感覚、どちらが正しかったのでしょうか。
学生側の、『意味不明なマナーの会社など淘汰される』
社長側の『人が話している最中にお茶を飲む社員などいらない』
会社は、社長のペットボトルに関する感覚を共有できない学生を排除しました。
他の部分でも社長と共通する感覚の学生ばかりを採ると、社員の人格に偏りが生まれます。
会社が、社長に似た感覚の集まりになります。
そういう会社は、多様性の面では不利になります。
昔から狭い集落で交配ばかりしていると、病や変化に弱くなるので、他から血を入れる話はあります。
価値観が似た人たちの集まりが強いのか、多様性が強いのかはわかりません。
落とされた学生が、合理性が高くて後に他の会社で大成するかもしれません。
学生と会社、どちらが正しいのかは生物の歴史と同じく、生き残った方です。
こういうニュースが流れた時、会社を批判する声が出がちです。
そういう意見ばかり真に受けるのは、バランスが悪いので社長側の視点も考えてみましょう。
厳格で長生きする会社もあります。
企業説明会マナー問題まとめ
1.就職関係の場面なら、我を出さない方が無難
2.人によって許せる行動の基準は違う
3.考え方が正しい方が生き残る